インターナショナル・バカロレア カーディフ・オフィス訪問

インターナショナル・バカロレアのカーディフ・オフィスを訪問しました。数年前まで本部でしたが、現在は試験開発などを行う場所です。具体的には、年2回行われる試験問題の管理、試験問題の内容のチェック、そして全世界のプログラム・コーディネーターのサポート業務を行います。

写真に写っているこのオフィスの看板には、このオフィスがイギリスの中でもウェールズに所在するため、ウェールズ語でも下の方に表記がなされています。Baglorad Cydwladolとはウェールズ語でインターナショナル・バカロレアということになります。あまり知られていませんが、イギリスの中にもスコットランドとウェールズには別の言語があります。ウェールズ語は英語とは全く異なる言語です。地方公共団体であるウェールズ政府関連の就職には、ウェールズ語が話せると有利になります。

Genius in Every Child by Rick Ackerly

本の紹介です。子供の個性をのばす教育や親の姿勢が必要とよく言われます。Rick Ackerlyの本の一部を抜粋します。

 

Generalizing is a threat to education. Parents and teachers can get distracted as a child fails to measure up to the requirements of the environment. Beware of diagnosis. Labels, attributions, diagnoses, generalizations, and the whole idea of "normal" can be distractions and can be dangerous. "Normal" is the enemy of genius.

 

アメリカの幼稚園、小学校、中学校の校長を多数つとめ、ボーディングスクールの校長や、傾きかけた学校の再生を請け負って立ち直らせたりする仕事を多数行って来たRick Ackerlyの本です。当社の英語科主任であるPeter Ackerlyのお父様です。この本は小学校や中学校の子供を持つ親向けに書かれたもので、子供の成長を親や教師がどのようにサポートしたら良いかが具体的に書かれています。

 

最近は、少子化であることもあるのか、親が子供の問題をすべて子供の代わりに解決しようと頑張りすぎてしまう傾向があるなかで、本当はどのように対応したらよかったのか、子供の成長や個性をのばす為にはどうあるべきか、と言ったことが具体的な経験や事例をもとに書かれており、非常に参考になります。また、学校の先生方も子供への教育者としての接し方が学べます。

 

平易な英語で書かれており、3ページごとにひとつの話が終わることから非常に読みやすく、いつでもどこの箇所からでも何度でも読めるスタイルになっています。アメリカのAmazon.comから購入可能です。

 

ハーバード大学の学生生活

 


アメリカには多数の大学がありますので、各大学によって異なりますが、ハーバード大学の場合は、大学に入学すると1年生は原則として全員大学の寮に入ります。これは日本のトップの大学にはない面白い方式です。この大学1年生の寮生活の間に、学生同士がお互いを知り合うことができます。そして、寮生活であることから人的コネクションは密になります。

 

人的コネクションを育てやすい環境は、大学2年生に進学した時にも発生します。大学2年生になると、ハーバード大学の学生は多数存在する大学のSocialなクラブに加入することができるようになります。この加入プロセスは非公式に進む面白い事実上のものです。多数あるSocial なクラブの中には伝統のある名門クラブもあり、クラブのメンバーである上級生からコーヒーに誘われたり、ランチに行こう、という誘いを受けて話を聞くようなところから始まります。そのような最初の接触から上級生がクラブメンバーにふさわしいと感じたりすると、他のクラブメンバーからのランチやディナーの誘いが来て、お互いを知り合う機会が何度も設定されます。そして、最終段階のディナーや会合に招待されることができれば、クラブからの入会のオファーが出る可能性が出てきます。このような非公式なプロセスを勝ち抜いて、名門のSocialなクラブに入会することが出来たりします。ひとたび名門クラブに入会できれば、その関係は一生続くことが多いようです。このクラブの卒業生を通じて良い就職先を勝ち取ったり、将来のビジネスでの交渉が有利に働いたりと、人によっては人生を左右する程のメリットがあります。名門クラブになると、アメリカを代表する企業のCEOを多数排出していたりしますし、グローバルなネットワークとしてクラブメンバーは卒業後も突然、初対面の卒業生から外国で連絡を受けたりします。ちょっと慶応三田会に似ていますが、ハーバード大学の名門クラブの場合はメンバーを厳選しているので違いがあるでしょう。また、大学2年生になった時に非公式の入会プロセスが始まりますので、タイミングが合わない環境だと機会を逃してしまうかもしれません。

 

 

テンプル大学東京校舎 講座案内

テンプル大学ではTESOLの大学院修士課程のコースがありますが、その他にも様々なコースが単発で設定されます。今回は中学、高等学校の英語授業とは少し離れますが、英文契約書や法律英語に触れてみたい方の為の、Legal WritingやLegal Translation Skillsの講座をお知らせします。講師は日本語検定1級をもつ、日本語も流暢なChritopher Rath弁護士です。学校の英語の先生方も、たまには毛色の違う英語に触れてみるのも面白いかもしれません。英語が使用される目的が異なるため、あえてくどく多義的に解釈されないように表現したり、独特の言い回しがあったりと、違った英語を覚えることができます。

下記はテンプル大学の講師であるChristopher Rathbone弁護士の紹介と講座案内です。

 

http://www.tuj.ac.jp/cont-ed/instructors/christopher-rathbone.html

外国大学への出願プロセスーイギリスの場合

イギリスの大学の場合、出願はUCASUniversity and Colleges Admissions Service)を通してオンラインで行い、5校同時に出願できます。しかし、Oxford Cambridgeの併願はできません。大まかなイメージを作るため、詳細は省略して簡単にプロセスを記載してみます。あくまでも大まかな内容で、とりあえずイギリス人がイギリスから出願する場合を基本にします。

 

ステップは5つ。

 

ステップ1:Course.コースの精査、選択

ステップ2:Collage. 特定コレッジの選択かOpen Applicationかを検討。

ステップ3:Apply. 出願手続きはUCASSAQ (Supplementary Application Questionnaire)。外国からの出願の時はCOPAも。毎年10月15日(Oxbridge等。他は1月15日など。)を締め切りとするUCASへのRegistrationが最初のステップとなります。GCSEASの成績の添付をします。

ステップ4:Interview. 成績等から判断して面接を受けるに値する人材に手紙が来て、面接す       る。

ステップ5:結果発表. 受験生は1月末日までに結果を知らされます。入学が許可される可能性がある場合、学部とUCASから通知があり、受験生は当該通知に決められた手続きに従い締め切りまでに返事をしなければなりません。

 

以上が大まかなイメージですが、いつ頃から準備が必要なのか、日本だと学年の始まりが4月ですが、イギリスは9月前後ですので、スケジュール感を示す為にケンブリッジ大学の場合をサンプルに、あくまでも大まかに流れを示します。Oxford, Cambridge,その他医学部等を念頭にしており、他の多くの一般大学のスケジュールとは若干異なります。

 

 

スケジュール感 Cambridgeの場合(International Students含む)

1)4月。日本の高校2年にあたる6th Formの最初の年の3学期、つまり4月に大学のコースを確認して出願コースを検討する。

2)5月。コースが決まったら、5月に、当該CollageAdmissions Tutorに、自分のプランや状況をなるべく詳しく説明する。これにより、Tutorが出願者のポテンシャルを判断する。

3)6〜10月。この時期、9月で学生は日本の高3になる。International StudentsはまずCambridge独自のCOPAに情報を入力提出し出願料を納める。また、イギリス以外は9月、イギリス等は10月15日までにUCASの出願手続きを完了する。

4)10月22日。Supplementary Application Questionnaire (SAQ)を12PM Noon (GMTグリニッチ標準時)までに提出する。By the SAQ, it also enables us to collect information that's not part of the UCAS application but is helpful when assessing applications, such as the topics you've covered as part of your AS/A Level (or equivalent) courses (which helps our interviewers decide which questions to ask)

5)9〜12月。面接。海外での面接の場合、付加的な資料の提出を求められる場合がある。

6)翌年1月。結果発表。結果は3通り。①不合格、②the offer of a conditional place, subject to obtaining specified examination grades、および③the offer of an unconditional place.

7)A Levelの試験は6月、IBは5月に受験し、必要とされる成績の取得。

8)翌年10月。大学新学期スタート!

 

なお、「6th Form」とは日本の高校2年と3年に大体該当する高校のようなものと、とりあえず考えてください。

自動詞文化と語用論的移転

自動詞とは、大辞泉によると、動作主体の動作・作用が他に及ばないで、それ自身の動きとして述べられる動詞だそうです。そして他動詞とは、その動詞の表す動作や作用が直接他に働きかけたり、他を作り出したりする働きとして成立つもの、だそうです。英語だと、Transitive verb。主語から目的語に向かう動作を表す動詞なので、主客を転換して受動態を作ることができる性質があります。日本語では動作主を言わないで済ませるのが好きな傾向があることから自動詞が発達しているそうです。英語では、日本語で自動詞を使うところで受け身を使う場合が多いけれども、byをつけて動作主が認識される場合が比較的多いと言えます。日本語で「財布がみつかった」と動作主不明で表現されるところは、英語では他動詞でHe found the wallet.と言い、The wallet find.ということにはなりません。言語による事象の描写パターンが違う例ですが、日本語では動作主を背景に隠して、あたかも自発的に物事が発生したかのように言うことを好みます。これは、日本の文化的側面の言語への語用論的移転のようなケースと言えるかも知れません。

 

人間の遺伝的性質として、hierarchical aspectegalitarian aspectがあり、後者の性質は狩猟採集民時代に獲物の肉の分配システムの発達とともに集団選択の過程で適応、獲得してきたのではないかとの研究があります。日本は島国で他国の侵略を受けずに現代まで運良く続いて来たという背景から、突出したリーダーの存在を嫌うegalitarian aspectが強い可能性があります。Egalitarian societyでは、強いリーダーは平和な平等社会を乱すものとしてギリシャのオストラシズムのように村八分にあって排除されることから、社会の構成員は常日頃から目立たないように努めるため、言語レベルでも動作主を背景に隠す自動詞が発達しているのかも知れません。あくまでも仮説ですが。 

 

日本語は自動詞が発達した言語?

日本語は、誰が何をした、とういうようなことをはっきりさせず、動作主を言わないで済ませることが多い言語だそうです。

 

狩猟採集民時代に獲物の肉の分配を平等にするるために、平等主義が発達した時代の遺伝子を強く残している場合、突出した人物は排除される危険があるので、日本語の言語レベルでも動作主を曖昧にすることにより、身を守りつつ、平等社会を保って来たのでしょうか。英語の場合、日本語の前記のような表現は受け身を使ったり、別の表現になったりする場合が多く、翻訳する場合にスキルが必要となるようです。

Hunter-gatherer's egalitarian band control system

狩猟採集民hunter-gathererの部族のシステムは平等主義的統治システムで、そのような時代のシステムが、議論が多いけれども集団選択により遺伝的に人間のいわゆる本能に擦り込まれているのでは、という人類学者の研究があり読んでいます。Christopher Boehm教授のvirture, altruism and shameの研究では、egalitarian な社会では、獲物の肉の分配は平等に行われ、獲物獲得能力の高いメンバーが権力を持ちそうになると集団で殺害や追放が行われることがあるそうです。

 

中学や高校ではいじめ問題がありますが、そこでは人気者も最終的にはいじめられることがある、ということをテレビ等で見聞きしたことがあります。それは、子供の世界での集団行動でのいじめ問題は人類学的に人間がいわゆる本能として獲得した集団内での1人の人間が秀でることへの抑制の力が関わっているのでしょうか。

 

また、子供の教育の場面では、個性を引き出すことが重要とされる一方で、人間は平等であるとの教えも重要であり、そこに何かしらのconflictのようなものを感じます。さらに、大人の世界での成功者に対するバッシング、社会システムとしての累進課税、再配分としての社会保障システムと、憲法上保証される基本的人権としての「自由」との微妙な関係も、遺伝子レベルや生物界での強いものが生き残る自然淘汰とhunter-gathererの平等的感情の遺伝子レベルへの組み込みなど関係があるのか、考えてゆくと面白い点が多くあります。アリとキリギリスの話を子供に聞かせ、いい加減な生活をしていたキリギリスを非難する一方で、富の再配分を疑問もなく正当とし、いくら努力の結果金持ちでも悪者扱いする社会風潮の関係も面白いです。「みんな」という平等的なマインドセットでウォールストリートを攻撃して来た平等的な「リベラル派」のオバマ大統領が再選し、「自由」を強調したロムニーが敗戦しましたが、これも最終的には遺伝子レベルでの強いものへの抑制の顕在化なのか、考えてみると面白そうです。